六車コラムvol.6 〜8人制のフォーメーションとシステム②〜

8人制のフォーメーションとシステム②        

前回コラムでは、8人制で私が使っていたシステムについて話をした。        
これからはジュニアユースの11人サッカーが仕事場だから話せることなのだが。        
システムを考えるきっかけに、そしてヒントになれば幸いだと思います。        
少し長いですがお付き合い下さい。        
        
        

チーム全員の長所・短所を含めた個性によって決まるシステム 

もともと3-3-1や2-3-2、変則2-3-2のフォーメーションを採用していたのだが、全体的に身体が小さく、フィジカル勝負になると負け試合が増える。        
試合の勝ち負けのメモを見ると、そんな印象だった。        
選手の成長過程を見ていて、フィジカルが上がってこない(身体が小さいまま)、ディフェンスできる選手がいない(少ない)ということが問題だった。        
一方でオフェンスの選手はたくさんいて、一人ひとり個性があり、攻撃の選択肢は多かった。        
小柄だが身体の動く選手は多く、動きながらスペースを使った戦い方ができれば勝ち試合が多くなった。        
        
        
そんな中、どんな戦い方をするのがいいか決めるために考えた結果、        
「守備ができないならしなければいい→よりオフェンシブに」        
という決断をし、守備を極力やらないための選択肢の中から、シュートまでもっていけることを選んだ。        
シュートしきって戻り、前を向いて守備ができることでディフェンスを安定させる狙いだ。        
いかにオフェンスで充実させられるか、いかに守備をしないか、そんな考えがシステムを作るスタートとなった。        
        

選手の特徴・個性 

システムを作るスタートは「守備ができないならしなければいい→よりオフェンシブに」というものだった。        
では具体的にどんなシステムにするのか。選手の長所と短所をあげていきたい。        
        
"長所"
・足の速い選手、突破力の高い選手がいた        
・スタミナ、走力の高い選手がいた(3人前後)        
・1対1の守備で強い選手が1人いた        
・ゴールにがむしゃらな選手がいた        
・試合をコントロールしようとできる選手がいた(かしこく、サッカーを勉強している選手)        
・GKの能力が高く、ピンチも何とかしてくれたし、カウンターの起点ともなれた。        
など        
        
"短所"
・3-3-1だと、後ろの3人は守備、前の3人(FW入れれば4人)は攻撃という固定概念が強かった(チーム全体で)        
・試合をコントロールしようとできる選手が、1人ではコントロールしきれない(守備面、フィジカルの課題)        
(守備に追われて前を向いてプレーできないことが多い。)        
・守備の切り替えが遅い選手がいた(自分が好きなプレーだけを好んでチームに迷惑がかかるプレー)        
・守備ができない        
など        
        
これらをふまえて、        
        
・短所を消しつつ長所を出す        
・フィジカル勝負でなく勝負できる        
・小さいけど突出したものが別にあれば、それを生かせるポジションにおいてあげる        
        
とできるシステムを考え、チーム作りをした。        
その結果が前回のコラムにもあげた1-3-1-2というシステムである。(システムの詳細は前回のコラムで)  
1-3-1-2にしたことでの変化        
・⑤の選手(試合をコントロールしようとできる選手)は⑨と2人でアプローチすることができる(守備の面)        
これによって、⑤の選手の攻撃の長所を生かしつつ、守備の負担を減らして、よりコントロールしやすい環境を作った。        
⑨の選手は、⑤と組むことで献身的な守備が求められる。攻守の切り替え、理解度の高さも必要とされる。        
その選手がチーム内にいたことが、1-3-1-2のシステムにする決め手にもなった。
・両サイドの③と②はかなり上下運動が大変で、ウィング⑥と⑧のフォロー、オーバーラップ、インナーラップ(FWの空いたスペースに斜めに走りこむ動き)といったオフェンス参加と献身的なディフェンスが求められる。 
このポジションは、スタミナがあるという選手の長所を生かすことができる。 
・FWの位置を空けることによって、強制的にスペースが空いている状態を作った。
これは、小柄だが身体の動く選手が多く、動きながらスペースを使った戦い方に向いている選手の長所を生かすのを目的とした。
FWの空いているスペースに誰かが(自分が)入り、そこへ動いた選手が元いた場所にスペースが生まれる。
3-3-1の場合はスペースを作っていかないといけないが、1-3-1-2はスペースが作られた状態から、そのスペースをみんなで使っていくので、スペースを作るのではなく、前の選手を意識してスペースを埋めていくのでわかりやすい。
そして同時に、流動的に動くことによって、攻撃でのフィジカル勝負があまり必要なくなり、小柄という短所をがカバーできた。
・GKが何とかしてくれたことが大きい
GKが頑張って止めてくれていたので、GK①と、1対1の対人で勝てるディフェンス④の2人に「守備だけ」を任せることができ、他の選手は常に攻撃を意識して動くことができた。
他の選手は、ディフェンスをするというよりも、①と④の2人を助けるような動きを意識する。④は奪うのではなくカバー。他の選手で奪いに行くような形を常にとってスライドしていく形に落ち着いた。
1-3-1-2にすることによって、3-3-1ではできない攻撃ができるようになり、3-3-1よりも前を向いて守備ができるようになった。
選手の短所を極力減らしつつ、いかに一人ひとりの長所で勝負できるか。そんなシステムを考えるのが指導者の役割でもある。
小さいからダメではなくて、小さいけど他に突出した長所があるのであれば、長所で勝負できるポジションにおいてあげる。それが選手が一番成長できる環境だと考えています。


良い変化が多かったが、課題もあった。
このシステム(1-3-1-2)で起きた課題にもふれておきたい。
運動量のある選手を適正ポジションに置いた結果、前後半果敢に動いてくれた。その結果、他の選手も連動した動きが必要になり、後半、試合の終盤になるにつれて、他の選手の走力が落ちてしまった。
走力が落ちるとともに、パス、シュートなどの技術的なクオリティが落ちてきてしまう。チーム全体のプレーの質が落ちてしまうことになってしまった。
フィジカル勝負をしないために、全員の走力を上げざるをえなくなり、体力的に大変な選手が出てきてしまった。それがこのシステムで起きた課題だ。

最後に

このシステムで、最終的に自分のイメージしていたものの4~5割しかできなく、全部はできなかった。
それでもいい形は作れていたし、面白い得点がとれたり、割と固いディフェンスもできはじめていた。
実際選手がどう評価しているかは分かりませんが。

スペースをあらかじめ作った状態から、そこへ走りこむという手段で動きながらスペースを使う戦い方によって、ボールコントロールに差があっても「走力」でカバーできる。
システムにより、役割りがはっきりしていたので、ベンチメンバーも含め、誰が試合に出ても問題になることはなかった。

ジュニアユースでは、個を伸ばし、個人戦術の完成を目指すのと同時に、選手の個性によって選手が伸びるシステムを考えて勝負できるチームを作っていきます。
11月の毎週月曜に南中学校で第一次練習体験会が始まります。是非グラウンドにお越しいただき、私たちのトレーニングを体験していただけることを楽しみにしています。

EVO Football Club

EVO Football Club(エヴォ エフシー)は 静岡のジュニアユース立ち上げを目標に活動しているチーム。 everyoneの「みんなと」、evolutionの「進化」を意味します。個の能力と戦術をしっかりと浸透させた近代サッカーを表現しよう!

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