六車コラム(コーチのサッカー観)

Vol.1チェルシーvs川崎フロンターレに見た日本と海外との差

2019年7月19日に行われたチェルシーvs川崎フロンターレの一戦。
後半終了間際、中村憲剛選手のループパスに飛び込んだ、レアンドロ・ダミアン選手がヘディングで決め、1-0で川崎が勝利した。
結果は川崎の勝利。しかし、チェルシーが見せたあるプレーの質に、日本との差を感じた試合でもあった。

予測・動き出しの速さに感じた質の高さ

動き出しの速さ、特に「3人目の動き」に大きな違いが見られたのに注目した。
次のプレーを予測し、自分がボールを受けるための動き出しの差だ。
ボール保持者(と受け手)以外の選手が、ボールを持っている選手が何をするかを予測し、迷いなく動き出している。
そんなシーンがチェルシーでは当たり前のように繰り返される。いわゆる「3人目の動き」だ。
3人目の選手の動き出しが速いため、ボールを受ける時にはスピードに乗っていて、より優位な場所で受けることが可能となる。
それは、ペナルティーエリア付近であっても、DFからのロングボールであっても変わることはない。
動き出しの質によって、相手の一歩先でボールを受けることができる。そのため、縦への推進力が増し、攻撃に迫力が出る。
そこに差を感じ、そこに魅力を感じた。
チェルシーは若い選手中心だったのだから、日本と海外とでは埋めがたい差があるのだと感じた。
そして、その「3人目の動き」をしている選手が同時に複数いるのだから、守備側視点で見ると捕まえきれないのも無理はない。

日本と海外で変わらないもの

では、試合を通して川崎とチェルシーで変わらなかったものはあったか。
もちろんあった。何せ1-0で勝利しているのだから、劣っていることだらけではない。
変わらないもの、それは、トラップ・パスの精度などの技術面だ。
アイディアの差はあるものの、技術に関してはそれほど差はないと言っていいと思う。
技術面は世界に追いつきつつある。
同時期に行われたマンチェスター・C vs 横浜F・マリノスの試合でも、動き出しの質で差が多く見られた。
ボールを扱う技術以外のオフ・ザ・ボールの動きの質に差を感じた今回の試合。
 その質は、私たちが携わるジュニア、ジュニアユースの年代から学ぶ事が必要であるのは言うまでもない。

Vol.2偽サイドバック

2019年9月5日に行われた日本vsパラグアイの試合の後半、富安が右SB(右サイドバック)に入った。
右WG(右ウィング)に入った縦関係の久保建英と好連係を築きつつ、タイミング良くオーバーラップ。
終盤には板倉滉のスルーパスに抜け出し、好クロスも上げた。守備ではCB(センターバック)でも見せている1対1や空中戦の強さを発揮し、攻守ともに上々のパフォーマンスを見せたと思う。
ただ、右SBとしての冨安が興味深かったのは、プラスアルファの仕事だ。
右SBの持ち場を守りつつ、中盤も気にかけている様子が見てとれた。
85分のカウンターを食らいそうになった場面で中央に絞り、インターセプトしてピンチの芽を摘んでいたシーンが印象的だ。
攻撃時にSBがDH(ディフェンシブハーフ)のようにプレーする偽サイドバックの存在をご存じだろうか。
富安のポジショニングに対して、解説の都並さん(城だったかも)が口にした「偽サイドバック」という言葉。
ヨーロッパでは3年程前から使われていた言葉だったが、私が日本の試合で聞いたのはこれが初めてになる。
(プレミアリーグばかり見ていて、日本の試合を滅多に見ないからかもしれないが。)
では、偽サイドバックとはどういった動きを言うのでしょうか。
一言で言うと、SBが、DHが上がってできたスペースに入り、DHの役割をする事を言います。
下に動画にしたものがあります。
センターフォワード(CF)「⑨」にくさびが入った時やWG「⑩⑪」にボールが入った時(動画では⑩に入る)に、IH(インサイドハーフ)「⑦⑧」とDH「⑥」の選手がサポートまたは裏のスペースへ抜ける動きをする。
その時に空いてしまうDH「⑥」が元いたポジション(スペース)にSBがずれて入り、チャンスメイクする役割を担うポジションをとる事です。
SB「②⑤」を赤色にしているので注目してほしいと思います。
     

偽サイドバックを戦術にすることのメリット

<オフェンスのメリット>
・DHが一つ前のポジションをとれる→普段よりも多い人数で中盤を制することができ、そこから展開できる
・SBがDHの位置に入ることで、DHが後ろのスペースを気にしないで上がることができる
・攻めあぐねた時に、DHの位置にSBがいることで、そこへ下げてもう一度組み立てることができる
・DHの選手が、攻撃の時にフリーマンのように自由にサポート、抜けだす動きができる(FWにもなれるしサイドにもなれる)
・SBがオーバーラップする時に、偽サイドバックの動きで移動したDHの位置からスタートすることができるので、短い時間でできる
・DHにはディフェンス力が求められるが、SBがDHの位置に入ることで、ディフェンス力が少し劣っても、推進力のある選手をDHに置くことができる
SBが、上がったDHの位置に入ることで、DHが後ろを気にしないで攻撃に専念できる。そして奪われた時も、DHの位置で数的優位が作れ、ボールを奪い、カウンターを止めることができる。
DHが上がることで攻撃の人数が増え、数的優位を作ることができる。といったメリットがある。
<ディフェンスのメリット>
・ボールを奪われた時に、DHが上がってできたスペースを偽サイドバックがカバーできる(守備のリスクをなくす)
・カウンターの時に一番使われたくない場所(相手の攻撃の起点となるDHの位置)で第一DFができる→奪った時にそこから攻撃を始められる
   
<偽サイドバックを使うためには>
偽サイドバックを使おうとすると、SBに求められる事が多くなるので、戦術を理解し実行できるSBが必要になる。
また、SB以外にも、DFの裏のスペースをカバーできるGKが必要になる。
これは、SBがDHの位置に入ると、ディフェンスの人数が1人(または2人)少なくなり、裏へのボールの処理を、GKを含めたDFで対応することが必要になるからだ。
さらに、1対1で突出しているWGが両サイドにいることも必要になる。
WGが簡単に1対1で奪われてしまうとリスクが高いため、1対1に突出したWGが必要になるからだ。
偽サイドバックがDHが上がってできたスペースに移動中、周りの選手も準備できていない時にWGが簡単にボールを奪われると、サイドに空いた膨大なスペースを使われてしまうため、
WGは1対1をするタイミングを見て勝負をする必要がある。WGは奪われた時のリスクを理解してプレーしなければならない。
では、DHのスペースを埋めるのはSBではなく、CB(センターバック)ではダメなのだろうか。
一つは、CBが上がると相手FWのマークを外す時間が一瞬でもできてしまうこと。
さらに、DHの役割を担うのに、CBよりもSBの方が足元が上手く、適任者が多いことから、SBが良いとされている。
ただ、DHの能力のあるCBが上がるというやり方をしているチームもヨーロッパにあることも事実だ。
上手いCBがいるのであればCBがDHの位置まで上がり、SBが内側にしぼる(CBのポジションをとる)ことも可能である。

まとめ

偽サイドバックの戦術によって生まれるメリットは大きい。
しかし、そのためには豊富なタレントと戦術理解、チームとしての成熟が欠かせない。
しかし、偽サイドバックが戦術の全てではない。監督の数だけ戦術がある。だからサッカーは面白いと思う。

Vol.3ポゼッションサッカーの理論①

ポゼショナルプレー。いわゆるパスサッカーと呼ばれている理論について。
まず、ポゼショナルプレーの一番の大元の原理となる「5レーン理論」についてから話していきたい。
・どこの場所でも三角形を作れるようなポジションをとれるようにする。
・前の選手と後ろの選手は同じレーンにいなければならない。
(横のレーンに入ると、三角形が崩れてしまう)
「5レーン理論」とは、ピッチを縦に5等分し、同じレーンの選手が横のレーンに入ることがなく、
常に三角形を作りながらパスコースを作るという考え方である。
三角形は、近い3人の小さいものから、遠い3人の大きなものまで考える。
次に、三角形を作ることによって生まれる「三種の優位」がある。
5レーン理論にもとづいて三角形を作ることによって、次の3つの優位な状況を作ることができる。
①数的優位
②質的優位
③位置的優位
①の数的優位は、相手1人に対してこちらが2人、3人になるような状況が作りやすいということ。
パス回しの鳥かごのような状態を想像してもらえればいい。
②の質的優位は、質の高い選手、優れた選手に1対1を作り出してあげられるということ。
マッチアップする相手に対して能力的に上回る選手がいれば、あえてそこを孤立化させて
1対1で崩すといった戦略がとれる(グループとして上回っているのであれば2対2などでも良い)。
③の位置的優位は、相手をつり出す、引き出すことによってスペースができ、良い位置で
ボールを受けられるということ。マークを受けない中間のポジションをとることで、
相手が迷う様な位置。

位置的優位

青③が下がることで赤③をつり出し、できたスペースを青⑤が使ってシュートまで行く。
ポゼショナルプレー、いわゆるパスサッカーと呼ばれているものは、5レーン理論にもとづき、
常に三角形を作りながら三種の優位満たす位置にポジションをとる。そうすることで優位に
試合を運んでいくという考え方である。
次回はより細かくポゼッションサッカーについて話していきたいと思います。

Vol.3ポゼッションサッカーの理論②

ポゼッションサッカーの理論①では、5レーン理論、三種の優位について話をした。      
「ポゼショナルプレー、いわゆるパスサッカーと呼ばれているものは、5レーン理論にもとづき、常に三角形を作りながら三種の優位満たす位置にポジションをとる。そうすることで優位に試合を運んでいくという考え方である。」という話をした。      
今回は、ポゼッションサッカーの理論より細かく話していきたい。      
ポゼッションサッカー
ポゼッションサッカーとはポストプレーの繰り返し
では、なぜ三角形を作るといいのか。
一つはパスコースが2つあること。もう一つは、有効なポストプレーを繰り返しできることだ。
四角形、台形といった形もあるが、三角形が一番少人数かつスピーディーに、連続的に
ポストプレーを行うことがができる。
ポストプレーというと、前の選手にあてて、後ろの選手におとすというイメージが強いが、ここでいうポストプレーは、三角形のうち、どの選手も頂点になりえる。
「誰かにあてておとす」の繰り返しがポストプレーだ。
この連続したポストプレーがポゼショナルプレーと呼ばれていて、ボールを持っていない
時間が多いので、周りが見やすく、次の場所へ移動しやすくなることにつながり、その結果、チャンスがどこにあるか、チームの目的にそったプレーの選択が可能となる。

ポゼッションサッカーは攻撃だけの言葉?

ポゼショナルプレーと聞くと、攻撃というイメージが強いと思う。パスをつないで前進してゴールにパスをする。大げさに言うとそういう解釈がされやすい。
しかしこれは大きな間違いである。ポゼショナルプレーとは、攻撃だけではなく、守備の事も考えてパスをつないで行く。ということだ。
パスをつないで前に行くだけだと、後ろのスペースが空いてしまい、ボールを奪われた時にカウンターを受けることが多くなる。
現マンチェスター・Cのグアルディオラ監督が昔言っていた言葉で、「10m以上でパスを
回さないから、ボールを奪われた時に10m以上走らなくていい。これがポゼッションサッカーだ。」というものがある。正しいポジションをとることが大切だと言っている。
よって、ポゼッションサッカーとは、パスをつなぐことよりも、一人一人が正しいポジションをとっていれば、パスはつながるし、ボールを奪われても10m以上走らなくてもいいから守備もしやすい。そういう考え方のことである。
パスで前へ攻めて行き、ボールを奪われたら全員で急いで下がって来る。これはパスサッカーではなく、奪われた時にむやみにボールに向かって走っていくのもパスサッカーではない。
守備の時もポゼッションサッカーは存在する。守備の時も三角形を作りながら奪いに行っているのだ。なぜならボールを奪った後は攻撃が待っているから。これがポゼッションサッカーだ。

偽サイドバックって5レーン理論から外れた動きなのでは?

ポゼッションサッカーは守備でも存在し、5レーン理論にもとづいた正しいポジションをとり奪いに行く。そうすることによって、ボールを奪った後も攻撃につなげることができる。
そんな話をした。では、偽サイドバックの動きは5レーン理論とは違う動きなのではないか
と疑問に思った方もいるだろう。(偽サイドバックについて詳しくは前回のコラムで)
ポゼッションサッカーの理論だと、上がったDH(ディフェンシブハーフ)の位置に入るのは縦のラインのCB(センターバック)のはずなのだ。
ではなぜCBではなくSB(サイドバック)なのだろうか。
ここで考えたいのがリスクマネジメントについてだ。
CBが前に上がり、DHのポジションに入った時のリスクについて考えたい。
相手FWが一人なので(2人いたら上がる発想にはならない)、CBが上がることで守備が1対1になってしまう(相手FWと味方のCB)。ポゼッションサッカーは攻守ともに考えられていなければいけないので、1対1だとリスクが大きい。CBは2人おいておきたいので、CBが前に入るのではなく、横のレーンへの移動にはなるが、SBがDHの位置に入るということが成立する。

これが偽サイドバックという戦術になる。三角形、攻守、リスクを崩さずに行うのが戦術である。
ただ、偽サイドバックの時に話したように、CBが前に上がり、SBがCBに入るという方法を
選択するチームもある。

まとめ

 5レーン理論はあくまで理論である。理論に縛られていては理論で対応されてしまうことになる。
あとはチームの監督が、自分の戦術を使うために、攻守におけるメリット、リスクを考え、どう理論を崩していくかが面白いところだと思う。そうやって新しい戦術が生まれて行く。

Vol.4サイドバックの重要性

サイドバックと聞いて、どんなプレーを想像するだろうか。
昔は守備のポジションというイメージが強かったサイドバックも、今ではサイドハーフより高い位置で攻撃参加をするシーンが当たり前となったように思う。
アシスト、時には得点することもある位置までサイドバックがポジションを取っている。
当然相手を0点に抑えるのが大きな役割りではあるが、サイドバックに求められることが間違いなく増えてきているのが現代のサッカーだ。
これまで話してきたように、ポゼッションサッカーは、5レーン理論にもとづき、三角形を作ることで数的、質的、位置的優位に立ち、相手ディフェンスを動かしながら空いたスペースを使って攻撃する。奪われても三角形を保ちながら、組織的に奪い返す。という話をしてきた。
(詳しくはこれまでのコラムで)
ポゼッションサッカーのオフェンスでは、左右どちらかのサイドにパスを回して攻めることで相手ディフェンスを集め(片方に寄らせ)、作った逆サイドのスペースにサイドチェンジする。
そこで位置的優位を作り勝負できる環境を作るということがルールとなる。(同じサイドで攻めきれてしまえば押し上げて攻めることもある)
サイドチェンジしてからは、
①サイドハーフが1対1で突破する。いわゆる質的優位。
②サイドバックと数的優位、位置的優位を作り突破するの選択ができる。
①では、サイドハーフには必ずマークは付いているが、1対1に優れている選手がいる時。
②では、サイドバックはマークに付かれづらいポジションにいるため、マークが付いてない時は数的優位、位置的優位を作り、サイドバックで突破する。
という考え方だ。グループとしても個としても勝負でき、簡単にサイドから攻撃することができる。これがポゼッションサッカーを用いて戦術が組み込まれた形だ。
守備だけではなく、攻撃においてもポイントとなるサイドバック。さらに「偽サイドバック」の役割りも場合によっては必要とされ、攻撃に厚みを持たせるためにはサイドバックの攻撃参加が不可欠になってくる。サイドバックの重要性は高い。
海外でもサイドバックの移籍市場は上がっていて、それほどサイドバックは貴重とされつつも出来る選手も多くはない。ディフェンスもオフェンスもできるサイドバックが重要視されている。
EVO FCでは、一人ひとりポジショニングを意識したサッカーで、サイドバックも加わった
厚みのある攻撃ができるようなチームにしていきたいと考えています。

Vol.5フォーメーションとシステム

フォーメーションとシステムと聞いて、その違いが分かるだろうか。        
なかなかその違いが分からず、一緒になってしまっている人が多いと思う。        
今回はその違いについて話したい。   
<フォーメーション>        
4-4-2、4-1-2-3、3-4-3などと表すのがフォーメーションである。        
簡単にいうとフォーメーションは数字で表した選手の配置、並びだ。        
キックオフの時や自チームのゴールキックの時にこの形になっていることが多い。        
<システム>        
システムとは、選手の動き方、守備の方法や攻撃方法など、試合中での機能を含んだものである。        
「戦術」と似たような意味で使われる。目的に応じて、試合中に複数のシステムが使われることもある。        
<フォーメーションで配置された場所が自分の仕事場ではない>        
フォーメーションで配置された場所が自分の仕事場と思っている人がいる。例えば左サイドMFの時の主な仕事場は左サイドの攻撃と守備(上下の動き)で、マークするのは相手の右サイドDFだから、右サイドDFがボールを持ったら、ただボールを取りに行けばいいという考えだ。              
               
               
フォーメーションとシステムを勘違いしていまうと、このような固定概念を生んでしまう。        
フォーメーションはあくまでもスタートの配置にすぎず、試合中は選手がどこまで守備をするのか、どこから守備をするのかなどの目的や状況に応じたシステムによってポジションを変えていく。        
システムに出会うことでフォーメーションの固定概念から解放されるだろう。        
         
         
〇システムの変更〇        
例えば4-1-2-3のチームでいうと、攻撃では5ライン理論にもとづいて三角形を作りながら        
ポゼッションサッカーをする。奪われたら4-4-1-1にシステムを変えてブロックを作る。DF4人、MF4人並んでいる形(ダブルライン)がスペースを消すのに適しているためだ。ここでの4-4-1-1は守備の時に、どう機能させるかを表すシステムとなる。        
こういった戦い方は、フォーメーションを見ただけでは分からない。
攻撃から守備でのシステムの変更(4-1-2-3から4-4-1-1へ)
攻撃の時にも使われるシステムの変更。             
例えば、4-1-2-3のフォーメーションでスタートする。             
⑪がボールを受けに落ちてくるいわゆる0トップの形になる。             
⑪が動いて空いたスペースに⑧が入る。⑧が動いて空いたスペースに⑨が入り、⑨が動いて空いた             
スペースに②が偽サイドバックの動きで入る。             
このシステムでは、フォーメーションで配置されたポジションと、試合中に位置するポジションが             
全く違う選手がいるということがよくわかるいい例になる。
攻撃で使われるシステムの変更
システムは何を基準に作るものか
では、システムはどうやって作るのか。何をでは、システムはどうやって作るのか。何を基準に考えたらいいのか。        
システムは、選手の個性によって作られる。        
選手の持っている個性、特徴をチームで生かせるシステムを作るのだ。        
守備では、どこから1stディフェンスをするか、いかに効率よくダブルラインを作るかが大切であり、選手の個性や奪われた場所によって決める。ただボールを追うだけは戦術ではない。        
(*ダブルライン・・・DF4人のライン、MF4人のラインで相手に対しブロックを作ること)        
攻撃では、スペースをどう使うのかで決まる。        
しかし、選手の個性を生かすために、同じフォーメーションでもシステムが変わり、全く異なる動きになってくる。        
例えば、マン・Cのグアルディオラ監督の場合は、サイドに幅をとってスペースを使い、アトレティコのシメオネ監督は相手を引き込んでカウンターでスペースを使う。
マン・C(サイドに幅をとってスペースを使う)
アトレティコ(相手を引き込んでカウンター)
2チームはほぼ同じフォーメーション(DF4人、両サイドMFにFW1人で真ん中は3人で三角形の布陣)        
だが、スペースの使い方の違いでシステムが変わり、チームとしての動きが全く違うものになる。        
このように、選手の個性によってシステムは作られる。選手の個性によてスペースの使い方が変わるからだ。        
フォーメーションだけではなく、システムを取り入れることによって、スペースの使いが        
変わってくる。これがフォーメーションとシステムの違いである。        
EVO FCでは、フォーメーションにとらわれすぎずに、システムで戦っていくチーム作りをしていきたいと考えています。   

8人制のフォーメーションとシステム①  

ジュニアユース立ち上げに向けて活動している今、小学6年生の選手と親御さんに向けて、      
小学生の8人制サッカーで私が使っていたシステムを紹介したい。      
なじみのある8人制の話なので、EVOという新チームの指導者が、どんな考えでサッカーを      
しているかをわかっていただければと思う。      
フォーメーションは1-3-1-2。ディフェンス1人、両サイドハーフとボランチで3人、トップ下1人、両ウィング2人と配置する。FWはいない。いわゆる0トップの理論を用いて考えた形だ。
守備の時は②③と⑥⑧が一つずつ下がれば3-3-1(システムにより4-2-1にもなる)の形になる。      
中央の難しい場所も⑤⑧の2人で固めることができ、ボールの保持も可能となる。      
そして大事なことはFWの位置が空いているという所だ。      
FWの選手がいると、決まった場所に止まってしまうことが多いが、このシステムでは、誰かがFWの位置に入ることによってスペースが生まれる。このスペースを他の選手で埋めていくだけで三角形が簡単にできることと、より攻撃に厚みができる。フォーメーションとしては変な形だが、攻める時は1-3-3で厚みのある攻撃が、守るときは3-3-1(4-2-1)となり3人のブロックが2ラインでき、しっかり守ることができる。

攻撃(FWの位置に誰が入るか)

守備(ディフェンシブハーフ、トップ下がカバー)

なぜこのようなシステムをとることにしたのか、選手の欠点を補い、長所を生かすために考えたシステムだが、選手の個性を含めた詳しい説明は次のコラムでお伝えします。 

8人制のフォーメーションとシステム②

前回コラムでは、8人制で私が使っていたシステムについて話をした。        
これからはジュニアユースの11人サッカーが仕事場だから話せることなのだが。        
システムを考えるきっかけに、そしてヒントになれば幸いだと思います。        
少し長いですがお付き合い下さい。        
        
        
チーム全員の長所・短所を含めた個性によって決まるシステム 
もともと3-3-1や2-3-2、変則2-3-2のフォーメーションを採用していたのだが、全体的に身体が小さく、フィジカル勝負になると負け試合が増える。        
試合の勝ち負けのメモを見ると、そんな印象だった。        
選手の成長過程を見ていて、フィジカルが上がってこない(身体が小さいまま)、ディフェンスできる選手がいない(少ない)ということが問題だった。        
一方でオフェンスの選手はたくさんいて、一人ひとり個性があり、攻撃の選択肢は多かった。        
小柄だが身体の動く選手は多く、動きながらスペースを使った戦い方ができれば勝ち試合が多くなった。        
        
        
そんな中、どんな戦い方をするのがいいか決めるために考えた結果、        
「守備ができないならしなければいい→よりオフェンシブに」        
という決断をし、守備を極力やらないための選択肢の中から、シュートまでもっていけることを選んだ。        
シュートしきって戻り、前を向いて守備ができることでディフェンスを安定させる狙いだ。        
いかにオフェンスで充実させられるか、いかに守備をしないか、そんな考えがシステムを作るスタートとなった。        
        
選手の特徴・個性 
システムを作るスタートは「守備ができないならしなければいい→よりオフェンシブに」というものだった。        
では具体的にどんなシステムにするのか。選手の長所と短所をあげていきたい。        
        
"長所"
・足の速い選手、突破力の高い選手がいた        
・スタミナ、走力の高い選手がいた(3人前後)        
・1対1の守備で強い選手が1人いた        
・ゴールにがむしゃらな選手がいた        
・試合をコントロールしようとできる選手がいた(かしこく、サッカーを勉強している選手)        
・GKの能力が高く、ピンチも何とかしてくれたし、カウンターの起点ともなれた。        
など        
        
"短所"
・3-3-1だと、後ろの3人は守備、前の3人(FW入れれば4人)は攻撃という固定概念が強かった(チーム全体で)        
・試合をコントロールしようとできる選手が、1人ではコントロールしきれない(守備面、フィジカルの課題)        
(守備に追われて前を向いてプレーできないことが多い。)        
・守備の切り替えが遅い選手がいた(自分が好きなプレーだけを好んでチームに迷惑がかかるプレー)        
・守備ができない        
など        
        
これらをふまえて、        
        
・短所を消しつつ長所を出す        
・フィジカル勝負でなく勝負できる        
・小さいけど突出したものが別にあれば、それを生かせるポジションにおいてあげる        
        
とできるシステムを考え、チーム作りをした。        
その結果が前回のコラムにもあげた1-3-1-2というシステムである。(システムの詳細は前回のコラムで)  

1-3-1-2にしたことでの変化        
・⑤の選手(試合をコントロールしようとできる選手)は⑨と2人でアプローチすることができる(守備の面)        
これによって、⑤の選手の攻撃の長所を生かしつつ、守備の負担を減らして、よりコントロールしやすい環境を作った。        
⑨の選手は、⑤と組むことで献身的な守備が求められる。攻守の切り替え、理解度の高さも必要とされる。        
その選手がチーム内にいたことが、1-3-1-2のシステムにする決め手にもなった。
・両サイドの③と②はかなり上下運動が大変で、ウィング⑥と⑧のフォロー、オーバーラップ、インナーラップ(FWの空いたスペースに斜めに走りこむ動き)といったオフェンス参加と献身的なディフェンスが求められる。 
このポジションは、スタミナがあるという選手の長所を生かすことができる。 
・FWの位置を空けることによって、強制的にスペースが空いている状態を作った。
これは、小柄だが身体の動く選手が多く、動きながらスペースを使った戦い方に向いている選手の長所を生かすのを目的とした。
FWの空いているスペースに誰かが(自分が)入り、そこへ動いた選手が元いた場所にスペースが生まれる。
3-3-1の場合はスペースを作っていかないといけないが、1-3-1-2はスペースが作られた状態から、そのスペースをみんなで使っていくので、スペースを作るのではなく、前の選手を意識してスペースを埋めていくのでわかりやすい。
そして同時に、流動的に動くことによって、攻撃でのフィジカル勝負があまり必要なくなり、小柄という短所をがカバーできた。
・GKが何とかしてくれたことが大きい
GKが頑張って止めてくれていたので、GK①と、1対1の対人で勝てるディフェンス④の2人に「守備だけ」を任せることができ、他の選手は常に攻撃を意識して動くことができた。
他の選手は、ディフェンスをするというよりも、①と④の2人を助けるような動きを意識する。④は奪うのではなくカバー。他の選手で奪いに行くような形を常にとってスライドしていく形に落ち着いた。
1-3-1-2にすることによって、3-3-1ではできない攻撃ができるようになり、3-3-1よりも前を向いて守備ができるようになった。
選手の短所を極力減らしつつ、いかに一人ひとりの長所で勝負できるか。そんなシステムを考えるのが指導者の役割でもある。
小さいからダメではなくて、小さいけど他に突出した長所があるのであれば、長所で勝負できるポジションにおいてあげる。それが選手が一番成長できる環境だと考えています。

良い変化が多かったが、課題もあった。
このシステム(1-3-1-2)で起きた課題にもふれておきたい。
運動量のある選手を適正ポジションに置いた結果、前後半果敢に動いてくれた。その結果、他の選手も連動した動きが必要になり、後半、試合の終盤になるにつれて、他の選手の走力が落ちてしまった。
走力が落ちるとともに、パス、シュートなどの技術的なクオリティが落ちてきてしまう。チーム全体のプレーの質が落ちてしまうことになってしまった。
フィジカル勝負をしないために、全員の走力を上げざるをえなくなり、体力的に大変な選手が出てきてしまった。それがこのシステムで起きた課題だ。
最後に
このシステムで、最終的に自分のイメージしていたものの4~5割しかできなく、全部はできなかった。
それでもいい形は作れていたし、面白い得点がとれたり、割と固いディフェンスもできはじめていた。
実際選手がどう評価しているかは分かりませんが。
スペースをあらかじめ作った状態から、そこへ走りこむという手段で動きながらスペースを使う戦い方によって、ボールコントロールに差があっても「走力」でカバーできる。
システムにより、役割りがはっきりしていたので、ベンチメンバーも含め、誰が試合に出ても問題になることはなかった。
ジュニアユースでは、個を伸ばし、個人戦術の完成を目指すのと同時に、選手の個性によって選手が伸びるシステムを考えて勝負できるチームを作っていきます。
11月の毎週月曜に南中学校で第一次練習体験会が始まります。是非グラウンドにお越しいただき、私たちのトレーニングを体験していただけることを楽しみにしています。

EVO Football Club
共同代表 杉浦 奨・六車 頌平


〒422-8008 静岡県静岡市駿河区栗原28-14
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TEL: 080-5116-5534
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